昨年、有隣堂さん主催の「ビブリオバトル」というイベントをきっかけに「本に出てくる文房具」を意識して読むようになってから、新しい読書の楽しみが増えました。
今まで「本の中の文房具」と題して
柚木麻子さん「けむたい後輩×万年筆」
竹鶴政孝氏「ウイスキーと私×ノート」
をご紹介しました。
今回は池田理代子さんの「ベルサイユのばら」 。
「ベルサイユのばら」は1972年から1973年まで週刊マーガレットで連載されていた少女漫画です。
ルイ15世末期からフランス革命までを描いていて、宝塚歌劇団が舞台化し大ヒットしたことでも有名。
フランス王妃マリーアントワネットとスウェーデンの貴公子フェルゼン伯爵との愛、女でありながら男として育てられた男装の麗人オスカルのせつない恋を史実を織り交ぜながら話は進み、きらびやかな宮廷のドレスも細部まで描かれて見応えあり。白黒なのに色がついて輝いて見えるんです。
私は小学生のときにこの漫画をもらって読みふけっていました。
「ベルサイユのばら」で文房具というとアントワネットとフェルゼンの恋文を想像する方が多いと思いますが、私の記憶に一番残っているのはアントワネットの結婚式のシーン。
オーストラリアからフランスに入り、結婚証書に羽ペンで署名をするアントワネット。
そこでペン先が紙にひっかかり、結婚証書にインクでシミをつくってしまう。
「なんと不吉な・・・・」とアントワネット波乱の人生を思わせるシーンです。
写真の羽ペンはボールペンタイプですが、当時は付けペン(ペン先にインクをつけて書く)で、インクが垂れたり、はねたりすることがあったようです。
現在の万年筆の原形ができたのは1809年ころ。
イギリスのフレデリック・バーソミュー・フォルシュが軸にインクを貯蔵 するペンを開発し特許を取得しています。
アントワネットが亡くなったのが1793年ですからアントワネットが生きているときにはまだなかったんですね。
現在は万年筆がありますし、紙もひっかからないなめらかなものが出ていますので、作中のアントワネットのようになってしまうこともなさそう。
ちなみにアントワネットの手紙好きは有名で、現在も100通を超える手紙が残っているんだとか。
そこでフランスはパリの老舗レター用品メーカー「エルバン」からはアントワネットシリーズというシーリングワックス(手紙の封をする時に使うロウ)やボトルインクが販売されています。
ボトルインクはガラス瓶でリボンがあしらわれておしゃれ。
飾っておきたくなるデザインで何度も購入しようかと考えているもののインクの色がシクラメンレッドなのでこんなに使わないかな、、と買わずにいます。ああ、こうやって書いていたらまた欲しくなってきました。
「ベルサイユのばら」はフィクションの少女漫画ながら世界史に興味を持つきっかけにもなるのでお子様がいらっしゃる方は教育という言い訳をつけて買ってみてください。